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高森明勅
2018.2.1 22:00

属国の証明

残念ながら、現在のわが国はアメリカの事実上の“属国”。

それを端的に示すのが「指揮権密約」だろう。

指揮権密約とは、一旦“有事”の際は
自衛隊は米軍の指揮下で戦うという秘密の約束。

これを裏付けるアメリカの公文書を発見されたのは、
獨協大学名誉教授で憲法史が専門の古関彰一氏だった。

占領終結直後の昭和27年(西暦1952年)
7月23日と同29年2月8日の二度にわたり、
当時の吉田茂首相が米軍の司令官(一度目はマーク・クラーク大将、
二度目はジョン・ハル大将)と、
口頭で密約を結んでいた。

クラーク大将がアメリカの統合参謀本部へ送った報告書
トップシークレット扱い)によると、サンフランシスコ講和条約
の発効によって既に日本が独立を回復し
たはずの昭和27年7月23日
に、
吉田首相と岡崎勝男外務大臣がクラーク大将の自宅に呼びつけられ
ている。

クラーク大将はその場で、
「(アメリカは)有事の際の軍隊の投入にあたり、
指揮権の関係について、
日本政府とのあいだに明確な
了解が不可欠であると考えている」

旨、「かなり詳しく説明した」。

端的に言えば、有事の際に日本の“軍隊”
(当時は警察予備隊)
は米軍の指揮下に入って
う事を約束せよ、という要求だ。

これに対し、
「吉田氏はすぐに、有事の際に単一の司令官(シングルコマンダー)
は不可欠であり、
現状ではその司令官は合衆国によって任命される
べきであるという
ことに同意した」と。

但し、事柄の重大性に鑑み、
吉田首相は以下のように付け加えている。

この合意は日本国民に与える政治的衝撃を考えると、
当分のあいだ秘密にされるべきである」と。

約束はするが、国民に知られないように“密約”にしてくれ、
という注文だ。

クラーク大将とその場にいたマーフィー駐日大使は、
これに同意を与えている。

その後、警察予備隊はこの指揮権密約に基づき
「保安隊」に格上げされ(
昭和27年10月15日)、
更に二度目の密約によって「自衛隊」
へ格上げ
(昭和29年7月1日)、という経緯を辿る。

国家最大の「実力」組織が、有事には
(つまり、
いざ防衛出動となったら)
他国軍の指揮下に入ることが予め決められているのだ。

まさに属国以外の何ものでもあるまい。

小野寺五典防衛大臣が以前、
日米共同作戦においても米軍に指揮権を委ねることはない」
と発言したようだ。

しかし、それをそのまま真に受ける訳にいかないのは勿論だ。

ひょっとして、米軍の“直接”の指揮下ではなく、
米軍から司令官を出す「米日連合司令部」に指揮権を委ねる
等といった体裁で、国民を誤魔化すつもりか。

日本以上に属国ぶりが徹底している韓国軍の場合、
米韓連合司令部(米軍が司令官を出す)が“公然”
戦時作戦統制権を握っている(
1994年迄は平時作戦統制権も)。

一度は、2015年に戦時作戦統制権が韓国軍に移管される
合意ができたも
のの、延期されている。

もっとも韓国の場合、朝鮮戦争が「休戦中」で、
まだ正式には終結していないという特別な事情がある。

その点では、わが国の方がよほど情けないとも言えよう。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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